IMDb 7.5/10 | IN MOVIES 7.8/10 | 122min| 2月12日(金)日本公開
レビュー:確固たる行動原理と大いなる人間的な欠陥の同居。
スティーブ・ジョブスは、自分を小沢征爾のような指揮者であると語ります。個々の優れた演奏者、個々の優れた職人はもちろん必要ですが、指揮者こそがそのプロジェクトの最終的なヴィジョンを持っており、皆をそこに連れて行く役割を担っているという意味です。
スティーブ・ジョブスは我らの時代のカリズマであり、凡人から抜きん出るその生き方に我々は魅了されます。
プロダクト・デザインやマーケティング能力に秀でているという表面的な事ではなく(実際失敗も多いし)、彼自身が信じる道を突き進む「活力」に、我々は魅了されるのです。そこには、自分に対する嘘がなく、自分に対して潔く、確固たる行動原理があり、同時に、大いなる人間的な欠陥が共存します。そしてそれらは、日常にある雑念、嘘、世間体などと対局にあるものなので、我々は魅了されてしまうのです(人によっては嫌悪)。この映画はそれらの核心を見据えて製作された勇敢な作品であるといえます。
1984年のMac、1988年のNeXT、1998年のimac、それぞれ新機種発表会場にて公演開始寸前のバックステージでの様子に的を絞った3部構成。時代感を出すために16ミリ、35ミリ、デジタルカメラを使い分けたとのこと。これは特に気にして観てほしい質感の違いです。やるなダニー・ボイル。
スティーブ・ジョブスは納得できるインテリアが見つかっていないという理由で、ほとんど何もモノがない、がらーんとした自宅の居間であぐら座りをして生活 していました。まるで、引越でほとんどの荷物を引越業者が運び出した後の雰囲気です。(このエピソードは原作と本映画でも描かれています)。
スティーブ・ ジョブスの手掛けたアップル製品(imac、ipod、iphone、ipadは全てスティーブ・ジョブスが立ち上げています)を振り返ると、外観デザインは言うに及ばず、製品内部の基盤の配置にさえも己の美学を通した作品達であることをひしひしと感じます。
2008年に日本で初めて発売されたiphone3Gを今、再び手にしてみたところ、その美しさと、何故か不器用さも含めた強気なかわいらしさの様なものが全く風化していないことに気がつきました。
キャスティング・メモ:
主演のマイケル・フェスベンダーはこの映画で円熟度むんむんです。「プロメテウス」のアンドロイド役、「悪の法則」の弁護士役、そして「マクベス」の王様役とほぼ同時のスティーブ・ジョブス役。様々な種類のフェスベンダーがいますが、どれも上手い。この映画でも外見こそスティーブ・ジョブスには似ていませんが、内面の演技、説得力が凄いです。実力派として今後も目が離せません。もちろんケイト・ウィンスレットも負けずにとても上手い。全員がしゃべりまくっているだけのとんでもない映画です。
(念のため、あまり評判の良くなかったこちらの「スティーブ・ジョブス」とは別の映画です。本作の日本公式サイトはこちら。
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